ただそれだけ!

JKじゃなくなった人間の陰鬱な日記

呪い

わたしはわたしをものすごくブスだと思っている、顔面コンプだ、という話を以前したと思うのだけど、これもまあ間違ってはいないんだけどさらに的確な表現を見つけたので言い換えることにする



わたしは、じぶんはじぶんが思っているよりずっとブスだということを知っている



がいちばん近い表現だと思う







正直鏡を割りたいほどじぶんがブスだと思ったことはたぶんない(めちゃくちゃ病んでる時は思ったかもしれないけど、めちゃくちゃ病んでる時の記憶は防衛本能が仕事してある程度飛ぶのでわからない)



むしろ、ときたま、ほんと~にときたまなら、鏡の中のわたしをもしかしてかわいいんじゃないか、と思ったことさえある


そして、じぶんでカスタムしたフィルターを使って自撮りアプリで撮って、さらに別のアプリ2個使いで加工した自撮りなら、間違いなくこれはかわいい!と思えることだってある





でもそれが虚構だということを知っている

それがまぼろしだということを知っている


他人にこの加工した自撮りを見せても、わたしの目に映っているほどかわいく見えていないことを知っている




わたしの目はおかしいのだ

わたしの目には、じぶんがほんの少しだけかわいく見える呪いがかかっている


そして、その呪いをもってしても鏡の中のわたしは決して大手を振って言えるほどの美少女ではない




それはつまりわたしって救いようのない醜女ってことだ







そういうことで結論を下して、わたしはわたしがとんでもないブスだと思っている

ていうかそれが事実だ、わたしはとんでもないブスだ




でも、この呪いのせいでじぶん自身の目にはほんのちょっとだけわたしがかわいく見えてるので、うっかりわたしがとんでもないブスだということを忘れてしまうことがある


そしてあとで「あっ!そうだわたしとんでもないブスだった」と思い出して落ち込む


うっかりわたしがブスであることを忘れてしまっていた時に買ってしまったかわいい服とか、わたしがブスであることを忘れてしまっていたときにTwitterに載せてしまった調子に乗った自撮りとか、そういうものを目にして死にたくなる




そもそもなんでわたしがその呪いに気づけたか、というと中学生のときにいちばん仲の良かった友達がびっくりするくらいかわいかったからだ

彼女は本当にかわいかった

男子も女子も彼女のかわいさを認めていた



いつもわたしの隣にいる彼女をみんな褒めたたえた


「〇〇はかわいいね」「なんでそんなに目が大きいの」「〇〇が学年でいちばんかわいいだろ」


彼女に向けて浴びせられるそんな賞賛を隣でずっと聞いていた




それは少し誇らしい気分だった

「わたしの友達、かわいいでしょう」

そう思って聞いていた



彼女がかわいいのはわたしも知っていた

呪いがかかった目で見ても、彼女はわたしの何倍もかわいかった

少しの羨望はあれど、嫉妬なんてまったくしなかった、頭にすらなかった



でも、かわいい彼女の隣にいるわたしを、周りは可笑しく思ったらしかった


いつのまにやらわたしは彼女を褒める材料のひとつになっていた

彼女と、隣にいるわたしを比べて彼女が優れていることを示すことが、いちばん手っ取り早い方法だったからだ


「脚の太さが全然違う」「(わたしの名前)のことじゃね~から安心して笑」「あっ、(わたしの名前)がかわいくないって言ってるわけじゃないよ笑」



ほんのちょっと、すこしだけ、違和感を覚える、揶揄を含んだ言葉の羅列は、じりじりと、それでも着実に、わたしの心を蝕んでいった




自分がかわいく見える呪いのかかった目を持った幸せな少女は、だんだん、だんだん、自らの目に見えている、自らにとっての「事実」と、他人の目に見えている、彼らにとっての「事実」に、ギャップがあることに気づいた





彼女とわたしは趣味もバッチリ合った

元来少女趣味で、レースやフリルがすきだったわたしは、服装にも控えめながらそれらを取り入れていた

彼女の服にもそれらはよく登場した

同じようにふわりと膨らむスカートで、同じような白いトップスで、同じような雰囲気で、わたしと彼女が並ぶと一際彼女は目立った



彼女と並んで鏡をのぞくとき、わたしはいつも僅かに落胆した

呪いにかかった目で見ても、輝きの差は歴然だった





そしてそれを決定づけたのは、いっしょに卒業旅行でディズニーシーに行ったときだ

わたしと、彼女と、あとふたり、合計4人で行った

彼女とひとりの友人がトイレに行った

わたしともうひとりの友人は先にアトラクションに並ぶことにした



帰ってきた彼女は、かわいらしいシェリーメイのカチューシャをつけていた

それはわたしがずっとつけたくて、ディズニーシーに来る前から、むこうに着いたら絶対に買うと何度も言っていたものだった



彼女にとてもよく似合っていた

ほんとうにかわいかった



それを見てわたしは涙が出た

こんなにかわいい、同じものを身につけた子が隣にいたら、わたしは恥ずかしくて同じ耳なんてぜったいにつけられない

惨めで悲しくて涙が出た




こうしてわたしは中学3年間をかけて、わたしの目に呪いがかかっていることに気がついた





今は高校で彼女と別れ、朝に駅で会ったり、たまに休日に遊ぶことはあるものの、頻繁に会うこともなくなった


彼女と同じような趣味の服を着ると比べられるのが嫌で、中学3年間で無意識に培われた自分の趣味じゃない服を買う癖も治りつつある


それでも、わたしは忘れちゃいけない

調子に乗っちゃいけない

わたしの目には呪いがかかっている

わたしはわたしが思うよりずっと醜い


それを忘れちゃいけない




そうやって自分に言い聞かせながらも、わたしはまた、わたしがとんでもないブスだということをうっかり忘れてしまう

いっそ、開き直ってすきな服を着て、すきなように、自分がかわいく見える呪いに甘んじて、生きていければいいのになぁ

その域まで行けたらいいのになぁ