引退したアイドルに遭遇したはなし
もちろん作品はどれも美しくて興味深いものばかりで、ポストカードを2枚とマスキングテープを買って、いま帰路についているところなのだけど
問題はここからの話
帰りに新宿でお茶をして帰ろう、という話になったが、誰も地元民ではなかったため、マルイなら何かあるかなとテキトーにマルイに入った
すると、入ってすぐのところにシナモロールカフェがあった
特段シナモンがすきなわけではなかったけどわりとすきなほうだし、なんだかかわいくておいしそうに見えたので入ることにした
少し待って店に入った瞬間、びっっっっっくりした
一時期応援していたとあるアイドルグループの、脱退して芸能界も引退してしまったとある元メンバーが、友達らしき男の子とふたりで座席に座っていた
目ん玉ひん剥くくらい驚いた
彼がシナモンを好きなのはよく知っていたが、まさかまさかまさかいるとは思わないだろう
正直言ってそこだけ輝きが段違いだった
もう普通の男の子だから、見ないようにしよう、見ないようにしよう、と思いながらも無意識にチラチラ視線をやってしまった
本当に申し訳なかった
彼は少し痩せたように見えたけど、友達と楽しそうに話す姿はただの本当に普通の男の子だった
彼のアイドルの姿しか見ていないわたしは、それがとてもうれしくてうれしくて少しだけ泣いてしまった
ゆっくりお茶しても良かったのだけど、どうにも彼がいる、というのはわたしの心臓にはとても負担で、勢い余って彼に声をかけてしまわないように、食べ終えると早々に店を出た
そしてまたなんとなく、日本全国のお土産を売っているお店でテキトーに八つ橋だったり信玄餅だったりをブラブラ見ていたとき
目の前を彼が通った
びっくりしてしまって迂闊にもガッツリ見てしまった
彼もわたしと連れをガッツリ見ていた
そのときわたしは、あぁバレてしまっていたんだな、ととても悔しく、申し訳なく、悲しくなった
君はもうアイドルではないのに、いつまでもいつまでも、縋りついてしまってごめんね
彼の最後のブログをもう一度読んだ
最後の最後までアイドルだった
最後の最後まで優しかった
一生反省するって言ってたけど、反省なんてしなくていいよ
アイドルだったときの記憶は覚えていたいと思うことだけ覚えていてくれればいいです
すきなことをして、すきなように生きてください
いっぱいいっぱい幸せをくれたあなたに、一生の重荷を負わせたくありません
これはヲタクの戯言なので彼には届かないけど、あなたがとっても愛されていたことだけ忘れないでほしいな
アイドルでいてくれてありがとう
君の未来にたくさんの幸せがありますように